デイサービスセンターありすの家

母の日に寄せて

ある親子を紹介したい。認知症を患ってしまったお母さまとそのお母さまを介護している娘さんのこと。
お母さまは残念ながら言葉が出てこないためご自分から会話をすることは出来ない。でも、周囲の方の会話をよく聞いて笑ったり、私たちの声掛けに小さく頷いたり、返事のように小さな声を出したり、残された能力でコミュニケーションをとられている。
その娘さんはこう言った。「座っている母の膝の上に頭を乗せると、母は私の頭を撫でてくれるんです。」「私の襟元を整えるように、触ってくるんです。」と。心がほんわかとなり、私は故郷を遠く離れて嫁いでしまった事を少し後悔する。「いいなぁ…」とうらやましく思う。
『我が子との時間の共有が出来る親の喜び』と、『大人になっても親の前では子供に戻れる娘の喜び』を感じ合える関係がそこにあり、母が介護される病気になってしまっても、親として接する娘さんのその健全さに私は脱帽する。ともすれば、親子の立場は逆転してしまう状況なのに…。
 お母さまの介護度は重度だが施設に入所することなく、とても苦しい時期もあったが、懸命に二人で乗り越えらた。今こうして親子に毎日笑顔があるのは、歳を重ねても親であり、子であることを忘れず、お互いが認め合っているからだと感じる。遠く離れてしまったけれど、私も母とそうでありたいといつも思わせてくれる二人なのだ。「そんな気持ちを教えて下さり、ありがとうございます!」と感謝している。
 介護職とはいろんな気持ちを体験できる、良い仕事だなぁ…と思うエピソードです。